ショートショート「ステクボ・ハルオ 26歳の秋」

「太陽は今 街中を 血の色に染めて・・・

この心と共に焦がす ありふれた午後・・・」

 

船着き場で一人、太陽が傾くのをずっと見ていた。

縄を括り付ける出っ張りの上にカウボーイブーツを置いて、自分の少年時代の様に陰惨で衝撃的な赤いスクリーンを海の上に認める。

 

スクリーンでは競う様に中国系移民の辮髪を結った中年男性達が罪を犯していて、テンガロンハットの鍔を下げて照り返しを避けながら俺は哀しい振りをするんだ。

 

時の刻みが62週ほど回った後は赤い海一面に天国のガラクタが降り注ぐんだ。

あっちじゃ海の話ばかりだって?

うすらトンカチ・・・

 

あっちじゃ死の後に降る雨の話で持ちきりだよ。

太陽の赤、血の赤、傷つかない赤、ドロドロで使い捨てで、水分というよりは悪意の脈動そのものに見えるお前の赤、その血には嘔吐作用があって大量に飲み込めないから、俺たちはお前を生かして保存する。

牧場の裏手に立てた牛小屋、その中に隠された4畳半の聖堂だ。そこにお前を隠す。腱は切らせてもらうけど、おまえが良い芸術を作る度にスープの中に豆を増やして提供してやろう。

 

いつか俺たちの心の中 国境がなくなるまで。