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村上龍著・「オールド・テロリスト」を読了した。

 

作家自体は大学生の時に、あのご尊顔が抽象的なグラフィック効果により美化されまくった表紙の全集を愛読していて、最近読んだのは確か5年位前に「半島を出でよ」を読んで以来だったから、本当に久しぶりの村上ドラゴンだった。

 

過剰な情景描写、俗悪を超越してもはや清々しいまでの「恥」文体、それを淀みなく読ませる高い文章力は変わらず健在で、567ページの長編だったが時間を忘れてあっという間に読み進んでしまった。

 

内容は大雑把に言うと戦争世代の老人達が停滞する日本にテロルを起こした場合の社会シュミレーション物というか、カンブリア宮殿とかで主に企業の偉人・大人物に会いまくったドラゴンならではの内容なのだろうなと感じた。

 

とにかく出てくるテロル関係者の老人達が精神・肉体・社会的技能において充実しまくった切れ者ばかりで、主人公の中年ルポライターが情報を引き出すため会いに行った首謀メンバーの一人である老精神科医に逆に分析されて理解・共感を引き出され人目もはばからず号泣してしまう下りが好きだ。

 

前作的な位置づけである「希望の国エクソダス」の内容はもう失念してしまったが、今作と繋がりがあるという事なので改めて読んでみたくなった。

 

10年以上前の話は大抵忘れているから、新鮮な気持ちであの「恥にまみれた」作品群をまた読み返してみるのもいいな。

 

開拓すべき芳醇な土地を見つけたカウボーイの気分だ。