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ゴッズ・オウン・カントリーというイギリス北部の牧場が舞台の映画を観に行ってきた。


主人公は不具の父に代わって牛や羊の世話をしている20歳くらいの青年で、自分の仕事や環境何かもかもに不満を持ち、行きずりの同性愛者と寝たり酒に溺れたりして憂さを晴らしている。


特徴的な彼のパーツは、なんと言っても目だ。

牛の競りの帰りに若者を誘ってガン掘ろうと、閉店後のバーから路上に放り出されるくらいに正体を無くす程飲んだくれようとも、何も変わらず彼の目はいつも通り死んでいる。


で、ある日季節労働者ルーマニア人青年がやって来て2人で羊の世話などしている内に…という筋で、中々良い話で終わるんだけどとにかく印象に残ったのは主人公の目だった。


バーのトイレでタイプの青年が隣からアプローチを掛けてきているその時も彼の目は死んでいたし、山の頂上で羊の世話をしながらカップメン食べている時もやはり目は死んでいた…


劇伴が全く無い中で荒涼としつつも美しいハンプシャーの景色、その中で死んだ様に生きる若者があるキッカケで生き返る、そんな流れの中に所々光るオカシなシーンがあってそれがグルーヴを生み出していた。


違う時に違う場所で違う人間として目覚められたらー


これはファイトクラブに出てくる「僕」の台詞だけど、良い映画体験について説明している言葉でもあると思う。


そういう意味だと、このゴッズ・オウン・カントリーもそういう体験になった。