5−2 被虐3原則

 

 
前項で触れたMつ的無明世界観の根幹となる鉄の掟が被虐3原則である。
 
貧困・根性・虐待
 
この3要素の内いずれかを内包するキャラクター達はMつ邪神の祝福を受けた人形達だ。
過程がどうあれ最終的には彼らの思惑通りに物事が進む、それが無明世界観という事になる。
 
「まず初めにスパイクありき」
 
第3野球部の主人公である檜あすなろ。
彼の記念すべき初登場は同級生の小出ら「DIRTY3」により品定めをされた上で、10円を対価にストリップをさせられ、あられもない姿を全校生徒の前でさらすという「虐待」シーンからスタートする。
 
登山家であった父を事故で失い母子家庭で育ったあすなろの生活環境は絵に描いた様な「貧困」の様相を呈しており、その為か彼の体格と逸物は欠食児童かと思われる程に貧相である。
 
そんな彼が所属する落ちこぼれ集団「桜高野球部3軍」が1軍のエース京本にスパイク舐めを強要させられる所から物語は始まる。
才能・能力・体格あらゆる面で劣る彼ら3軍が1軍に勝つ為には「根性」しかなかった為、河原で毎日地獄の様な練習を繰り広げていく。
 
Mつ作品においては、常に第1話こそが凝縮された無明原液であり、被虐3原則の全てが詰まっていると言っても過言ではないだろう。
2話以降は原液を延々薄めるだけの巨大な糞に落ち着いていくのがMつ流である。
 
仮にも甲子園出場に期待が掛かる、逸材揃いの1軍であったのに。
恐らく小中高と野球漬けの日々を送りセレクションされ抜いた上での縦縞シャツのはずだったのに。
それまでろくに練習にも参加させず、球拾いや洗濯といった雑事のみを積ませてきた3軍に邪神は微笑んだ。
無害な小動物達は突如として毒を有した危険生物と化したのであった。
 
何故の変貌か?と下忍・泡幕須が上忍・眺ノ丈に問うたとすれば、眺ノ丈は答えただろう。
 
「被虐3原則ゆえに」
 
ただそれだけの事なのである。
 
その他にも左腕がてんぼうであるハンディキャップを負った「貧困」少年野口精作が、「根性」の結果教師として同学年の生徒相手に教鞭をとるが、嫉妬により同級生の「DIRTY3」によって牛糞食を強要されるという「虐待」から始まるドクノグ第1話や、
 
四畳半のあばら家で鬱々とした生活を送る「貧困」学生・上杉が影で血のにじむ様な投球訓練を積み「根性」しつつも、唾入りコーラの一気飲みを上級生の「DIRTY3」達に強要される「虐待」から始まる「上を向いて歩こう」第1話、という風に枚挙に暇がない。
 
上記2作品の2話目以降の展開は3軍のそれと同様の筋を辿る事になる。
 
なにゆえでござるか?
 
被虐3原則ゆえにー